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ビートルズ解析例 その13 「宇多田ヒカルの秘密」

このブログでは、音楽が心地よく聴こえるための「必要条件」の一つとして、その音楽が「1/fゆらぎ」の状態であること、を提唱しています。
しかし、まずは1/fゆらぎに固執せず、私が経験的に感じたことを書いてみます。

ビートルズの曲の多く、そしてその他のアーティストの曲を聴いて経験的に感じたのは、「低音が厚い」曲は心地よく聴こえます。
ただし、低音が「厚い」というのは必ずしも「低音が強調された」曲とは同じではありません。

まずは、この件を感じたきっかけを書きましょう。
ビートルズのアップテンポのロックンロールナンバーであるI Saw Her Standing Thereを昔、ラジカセなどの低音域が出ない装置で聴いていた頃は、あまり大した曲ではないと感じていました。
しかしその後、ちゃんとしたオーディオ装置で聴いたところ見違えるような心地よさを感じたのです。
そして、いろんな曲を聴くうちに、低音をカットしてもしなくても心地よさがあまり変わらない曲と、低音をカットしては心地よさが多いに損なわれる曲があることがわかってきました。
ベースの音がビンビン鳴っていて迫力のある曲がよい、という意味ではありません。低音部の音量に関係なく、心地よい、よくないの違いがあるのです。

若い頃から漠然とこのような感覚を持ってきました。
このブログを始めてから、そのテーマの一つにSGT. Pepper'sは何故名作と言われるのだろう、まだ誰もそれを明解に示したことがない、と思い、その解析を試みました。
その結果、SGTは低音が厚いこと、SGT以外のアルバムやシングルでも低音が厚い曲はよりヒットないしは名作と捉えられていることが、ほぼ言えました。

ここでいう「厚い」とは、音の種類や音程のバリエーションが豊富であることを言います。つまり、ベースが単純に根音と5度の音をシンプルに刻むようなものは厚いとは言わず、いろんな音色や音階をたくさん出し、しかも一つの音が倍音や音域が広いような低音を出す場合、私は「厚い」と捉えます。
厚くするためには、音程そのもののバリエーションを増やすことに加え、共鳴する楽器、例えばセミアコースティックな楽器を使うのがよいように思います。

従って、そういう意味で低音の厚みが薄い曲、例えばI Feel FineやHelp!、は低音をカットしても心地よさ(あくまで私のですけど)はあまり変わらないのだと思います。

ビートルズ以外のアーティストで低音の厚みが生きている方としては、ユーミンこと松任谷由実さんが典型的であることがわかりました。
ユーミンのかなりの曲は低音が厚くて心地よいです。しかし低音を絞るとよさが減ってきます(ユーミンさん、すみません)。
ところが、低音があまり厚くない「ルージュの伝言」では、低音を絞っても心地よさがあまり変りませんでした。

少し前にジョン・レノンは音楽以外にも様々な芸術性を持っていた、と書きましたところ、それを読んでくれた方の一人が「宇多田ヒカルもそうだと思います」とのコメントをいただきました。
宇多田ヒカルは、10年くらい前に娘たちが聴いていたのを脇でちらっと聴こえていた程度しか聴いたことがありませんでしたけど、印象的な歌で心地よかったことを覚えていました。
これだけヒットし影響を与えたアーティストなので何かあるに違いないと思い、10日くらい前にSingle Collection, Vol. 1というCDを借りてきて聴きこみました。
いろいろ実験をした結果、おもしろいことがわかりました。
ヒカルさんの曲は低音を絞っても十分に心地よかったのです。低音なしでも十分に聴けるという感じです。
こういう歌手はオペラなどには結構いるのかもしれませんが、ポピュラーでは珍しいのではないでしょうか?

その心地よさはヒカルさんの歌(そして多分中、高音楽器も含め)の音の選び方にあるのか、はたまた声そのものによるものなのかは、まだよくわかりません。ただ、印象としてはいろんな音程を行ったり来たりで、リズムも結構バリエーションが多そうです。そして声自体も音色が厚いようです。天然のビブラートもあるみたいで。

ところで、「聴いて心地よい」という状態を私なりにイメージングしてみます。お付き合いください。
人の声、あるいは何かの楽器が出す音の広がりを一人の人間の形に模してください。
その人間の上下方向を周波数、すなわち音の高低、横方向は音の密度(むつかしく言えば、その高さの音の存在確率)と考えてください。
聴いて心地よい音の広がりとは、その人間がきれいな三角形(正三角形とか二等辺三角形)の形を取った場合ではないでしょうか。
つまり、一番高音である頭の先が一番小さく、一番低音である床面が一番広い、形です。
ちょうど人間があぐらをかいてきれいな三角形になったような場合を想像してください。

音域の違う楽器と人の声が集まってある曲を形成している場合、それは、各々の「人間」が、体育祭のビラミッドゲームをやるが如くに積み上がる状態を想像してください。
積み上がった「全体」の形がもしきれいな三角形であれば心地よい、と仮定します。
とにかく、大きさはどうであれ、三角形の形がきれいで、欠損などもなく、ギザギザもなく滑らかであれば心地よい、と考えるのです。

ご想像のように、楽器や声の一つ一つが単独で△の形を作るのは容易ではないですが、ピラミッドゲームの形式であれば△の形はより容易だと思います。
このイメージであれば低音を厚くする、すなわち三角形の底辺のあたりをしっかり形づくる、ことが心地よさにつながることを同意していただけるのではないでしょうか。

ルージュの伝言やI Feel Fineのベースは「厚み」が薄いため、ピラミッドゲームで言えば、大三角形の底辺のあたりが「台座」ではなく、「柱」のようなものがイメージできます。
その点ヒカルさんの曲は、大三角形の下の方を削っても(つまり低音を絞っても)なおきれいな三角形なのではないでしょうか。

ユーミンやビートルズの場合h、下の方を削った場合、ややいびつな三角形になるのでしょう。低音をも含めた大三角形まで捉えればきれいな形なのでしょう。

音楽は感性なので解析は無意味である、というご意見も聞きますが、物理学的に言うと、声や楽器の音の全ては結局周波数の分布なのであるから、その分布の形がどうであるかが心地よさを決めていると考えてもそんなにおかしくはなさそうです。

もしもこの考えが正しいとすると、宇多田ヒカルの歌に低音を厚くしたらビートルズやユーミンの曲を超える曲ができるということになります。
私の聴いた限りでは、ヒカルさんの曲はそんなに低音の厚くない曲が多そうですので、やってみる価値はあるのではないでしょうか。

今日はここまで。
ST Rocker
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さすがの着眼点です

ST Rockerさん、こんばんは~

以前コメントさせていただいてから、他のアーティストの名前を出して失礼だったかも、と思っていました。
宇多田さんを聴いてくださってありがとうございます^^

宇多田さんの曲の作り方というのは「鼻歌歌ってたら、なんかすごいのできちゃったんだよね~」みたいな、ナチュラルなものを私は想像しています。
その鼻歌の世界へ導かれるまま、宇多田ワールドへ・・・みたいな感覚です。
そういえば宇多田さん自身も先日、曲の作り方を聞かれて「メロディーは無理矢理作るものじゃなくて、聴こえてくるもの」と答えていました。

最近の作品はセルフプロデュースのものが多かったようですが、もっといろいろな方と組んで作り込んだ作品というのも聴いてみたかったですね。。
たしかにもっと色付けすることによって、さらにすごいものができるかもしれません。

ありがとうございました

Mikaさん

おはようございます! (今大阪からです)

さっそく、大変ご丁寧なコメントをどうもありがとうございました!

他のアーティストを挙げていただいたのは、むしろとてもありがたいですよ。
なぜなら、いろんなアーティストと比較したりすることで、よりよい音楽世界を求めていくのですから。

宇多田さんは生きているそのものがメロディーなのかもしれません。
生き様全体を見たらもっと何かが見えてくるかもしれませんね。

ありがとうございました。

ST Rocker

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Author:ST Rocker
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つくば-千葉-さいたま の三角形を行き来していますす。
モットー:理系なのに熱く音楽、政治・経済を語る。
酒と冒険と音楽をこの上なく愛し波乱万丈の人生を送るB型です。
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