宇多田ヒカル「初恋」の音の解析をしてみました (Part 1)
みなさまこんばんは。
メリー・クリスマス!
クリスマスイヴはいかがお過ごしでしょうか?
今日の記事の要約
・ある出会いを通じて、宇多田ヒカルの「初恋」の音の解析をやってみることになった。
・このブログでかつてやっていたビートルズの音の解析手法でやってみた。
・まずPart 1としてその途中経過を紹介する。現状の結果は驚くべきものである。
メリー・クリスマス!
クリスマスイヴはいかがお過ごしでしょうか?
今日の記事の要約
・ある出会いを通じて、宇多田ヒカルの「初恋」の音の解析をやってみることになった。
・このブログでかつてやっていたビートルズの音の解析手法でやってみた。
・まずPart 1としてその途中経過を紹介する。現状の結果は驚くべきものである。
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今日の記事を書いたきっかけは、ブログ「NewOrder」(←クリック)のGOMA28さんより解析のリクエストをいただいたことにあります。
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを語っておられます。素晴らしい記事が頻繁に更新されています。
今年10/17、20に「初恋」(←クリック)、「初恋-Ⅱ」(←クリック)という記事を書かれました。
GOMA28さんは、宇多田ヒカルの「初恋」を必ず一日に一度は聴くとのことです。ご家族もよく聴いているとのことです。
この曲を初めて聴いた時に、「初めてラベルの「ボレロ」を聴いたときのような充足感を覚えた」と綴っておられます。また、「天才が閃きと才能で作ったというのではない、彼女の畳み込まれた経験からはじめて晶結した曲だと思った。本当に詩に旋律にサウンド~アンサンブルに稠密な構築美を感じる。」とも綴っておられます。
僕はこの記事を拝見して、「これは何かあるに違いない」と思いました。
そして、早速youtubeで「初恋」を聴いたのでした。
僕は宇多田ヒカルは普通の人ぐらいには聴いたことはあり、その魅了される音楽には感動したことはあります。自分のブログの音楽解析の記事で、宇多田さんのことに言及したこともあります。
でも、「初恋」は未だ真剣に聴いたことはなかったのでした。
そして、GOMA28さんに次のコメントを差し上げました。
「宇多田ヒカルの「初恋」を毎日聴かれているのは印象深いです。私も聴いてみました。昔も耳には入っていたとは思いますが、しっかり聴くのは初めてです。確かにいい曲ですね。曲もいいですけど、メッセージも素晴らしいですね。さて、僭越にもこの曲へのまず印象を書かせていただきます。まず、歌のメロディーが細かい周期で上下を繰り返すのが特徴的ですね。ギザギザと上下しながらうねっていく。そのうねり方が、何となくきれいな対称形である気がします。まだあくまでも感覚に過ぎませんが。対称形とは言いながらも、全くの対称なのではなく、ややずれながらうねっている。富士山のような1つの峰の対称ではなく、八ヶ岳連峰と言いますか。音の分布をちゃんと取ってみたらおもしろいかもしれません。全体としてどっしりとした山並みなのか、緊張のある山容なのか、とか。そういった分布が聴く人に曲の印象を与えるのかもしれません。あと、宇多田さんの声と歌い方が特徴ですね。1つの音を出すのに幅広い声の出し方をするようですね。楽器で言うとバイオリンかギターのチョーキングのような感じを受けます。取りあえず、まずは感覚的なものを書かせていただきました。また、時間ができましたら、じっくり解析してみます。」
この話が進み、GOMA28さんより解析のリクエストをいただきました。
僕は、ある方から何かを頼まれるというのは、何かのご縁と感じて大事にしています。
自分でも得られる物が大きい場合がありますし、自分の枠組みも広がりますし。
よって、「初恋」の解析に取り掛かり、少しずつ進めてきました。
今日、解析はある区切りに達しましたので、Part 1として途中経過を紹介させていただきます。
本論に入る前に、とても長い前置きを書かせていただくことをお許しください。
僕は、9年前にこのブログを始めた時に、まずは「ビートルズがなぜ素晴らしいのかを新しい切り口で解析してみること」に絞っていこうと決めました。
そしてその目標はある程度達成したと思います。
そしてそのうちに、あらゆるジャンルで記事を無性に書きたくなり、怒涛のように書きまくり始めました。
片道30分の車通勤の行きに1記事、帰りに1記事が頭に浮かびました。
毎日記事を更新しても、新しい記事の構想がたまる一方で、一時は数十もの記事の構想がプールされていたこともあります。まさに”湧きかえる泉”でした。
それはそれでストレスが溜まりました。
あらゆるジャンルの記事を書くうちに、自分の特色は、理系の考え方の枠組みをベースに新しいことを考えることだ、と自信を持つに至りました。
こんな状態が2015年くらいまで続きました。
最近は、ようやく記事を書くよりも記事を構想する方が大変になってきました。ついに泉も枯れてくるのだな、と少し寂しい思いもしましたが。
ですので、考え方を変え、最近では新しい記事を生み出すよりも、これまでの記事をまとめ体系付けることに、より重点を置いています。
年齢的にもそろそろ若い人に伝える方に重きを置くようにシフトしています。
そのような機会も意識的にセットアップしていますので、ご興味ある方は気軽にご連絡ください。
そんなわけで、ブログを標榜している「ビートルズの新しい解析」のほうはすっかりご無沙汰してしまっていました。(ただし、ちょいネタ程度でしたら、自分の録音などを通じて随時紹介はしてきました。)
では、かつて真剣にやっていた「ビートルズの新しい解析」の一つとしての音の解析を少しご紹介しましょう。
以前からよく言われるのは「ビートルズの音楽は1/fゆらぎである」というものです。
1/fゆらぎとは、専門的に言うと、周波数fの対数と起きる現象のパワースペクトルの対数が反比例することです。
ま、専門的なことはともかく、1/fゆらぎという状態は人間にとっては心地よい状態だと言われています。
扇風機や洗濯機の動き方は、最近は1/fゆらぎに設計されていると言われています。
自然の風が心地よいのは1/fゆらぎに近い状態だからとも言われます。
高速道路での車の分布は、等間隔ではなく、1/fゆらぎになろうとする、という研究もあります。
そして、心地よい音楽の音の分布は1/fゆらぎか、それに近い状態である、という意見が多いです。
1/fゆらぎの科学的意味を正しく理解するのは難しいです。
化学をやってきた僕は、赤外線吸収スペクトルとか、NMRスペクトルといったものと同種の分布であろうと理解します。
僕はいきなり1/fゆらぎそのものを解析するのではなく、まずは”1/fゆらぎもどき”とも言える手法で解析してみることにしたのです。
すなわち、心地よい音楽の音の分布とは、低音部ほど音の頻度が大きく、高音部に行くに従い小さくなっていく。しかもその減少の仕方がきれいになっているほど心地よい、と。
これは仮説です。
わかりやすくイメージします。
山の形を思い浮かべてください。
山の下の方が低音、上の方が高音とします。
楽曲全体で使われる音を考えてください。ボーカル(歌)だけでなく、全ての楽器、すなわち耳に入る音全て、です。
心地よい楽曲の分布とは、富士山の形を思い浮かべてください。
どっしりした綺麗な逆三角形で対称形です。
楽曲で使われている音の分布は低音が最も厚く、高音に行くほど頻度が減少します。
ただし、「低音優先」とは思わないでください。
使われている音の音域は広く、音の数も豊富で、綺麗な分布。
「大きくて綺麗な逆三角形」なのです。
ある比喩をしましょう。
小学校の体育祭における組体操(すみません、正式な呼び名は何でしょうか? 最近多くの学校で禁止になった”アレ”です)です。
生徒一人ひとりを楽曲における音とします。
あのピラミッド型の逆三角形こそが最も美しい。そんな音の分布が、聴く者に心地よい感覚を与える、と僕は考えています。
あれの階層が多段であるほど、楽曲は心地よいと考えます。
あれがもし、一番下の階が、少ない人数で支えていたり、途中の階の人数が少なかったり、たったの3階建てだったりしたら、その楽曲の心地よさはイマイチでしょう。
僕は、ビートルズ、カーペンターズ、ユーミンなどの楽曲において、全ての使われている音の周波数と、その音が現れる頻度とのグラフをいくつか描いていました。
すると、僕の仮説はあながち間違ってはいないという自信を得たのです。
ただし、実験数はまだまだ十分ではありません。
それと、各音の音量をどう扱うかの問題があり、それもとても重要なのですが、ここでそれを話すと混乱しますので、省略します
そんな中、最も典型的な解析例がビートルスのDon't Let Me Down(←クリック)だったのです。
この曲は特に、ベースの音選びが、根音をしっかり強調すると共に、多種の音を多彩に使い、その分布が抜群であったために、とても聴くに心地よい楽曲となったと考えています。
ユーミンの曲も、どれも素晴らしいですが、さらに松任谷正隆さんのベースの音選びが素晴らしいことが、低音部の分布のよさに加担していると考えています。
ただし、低音さえ強調すればよいのとは違います。
例えば、ユーミンの曲の「ルージュの伝言」はベースの音が豊富ではありません。
ビートルズのThe Long and Winding Roadも同様です。
これらのベースのパートをもっと工夫すればさらに心地よく聴こえることでしょう。
すみません、僭越ですが。
そのような背景で、「初恋」の音の分布の解析をやってみました。
この曲はほとんどがボーカル(歌)から構成されています。
ベースのような低音部はほとんどありません。
ボーカルだけでもきれいな逆三角形になるかどうか、のような観点からまず音の解析を開始しました。
耳コピしてもよかったのですが、時間の関係で、ネットで楽譜を購入しました。
そして...。
その楽譜は驚くべきものでした。
楽譜を公表したいところですが、著作権法上、それはできません。
GOMA28さんへ書いたコメントでの感覚とほぼ同じでした。つまり、「ギザギザと上下しながらうねっていく。そのうねり方が、何となくきれいな対称形である。対称形とは言いながらも、全くの対称なのではなく、ややずれながらうねっている。富士山のような1つの峰の対称ではなく、八ヶ岳連峰のような感じ」。それは概ね当たっていました。
そして、解析してわかったこと。
1/fゆらぎのような感じとは大分違うということです。
驚きは、ソとラとシの3つの音でほとんど構成されていることです。
そしてその3つの音が”数学的”にきれいに対称になっているのです。
ボーカルのうち、イントロと主題1だけですけど、音を一つ一つ拾って、周波数と出現頻度の関係をプロットしました。下図です。

大きな3つの山がありますが、左からソ、ラ、シです。一番右の小さな山はレです。
特にイントロでは、ほぼ全くソ、ラ、シしか使っていません。しかもシが圧倒的に多いです。
主題では、イントロのソ、ラ、シより低い音、高い音を少し加えて、全体的にならすと、ソ、ラ、シをほぼ均等に出るように調整しているが如くです。
イントロと主題1を足したTotalという灰色の線は、音の数が少なく、そしてとてもきれいな対称を示しています。
上で、音の分布を富士山とか八ヶ岳連峰とか言ったのは、このグラフのことをそのまま言っているのではありません。
グラフのY軸(音の頻度)を横方向に持ってきて、X軸(周波数)を縦方向に持ってきての”山”の形です。
よって、「初恋」の山の形は中腹が出っ張った形になり、山としては不安定です。
しかも音の数が少ないので、なだらかな稜線ではなくヒイラギの葉のようなギザギザです。ただし、その対称形はとてもきれいです。
よって、「初恋」の音の分布は、僕がこれまでよいと考えて来た”1/f”チックな分布とはおよそ異なるものでした。
音の数が少ない歌というのはよくアマチュアがやりがちなことですけど、宇多田さんの場合はそんなことは全くないことは言うまでもありません。
事実、他の曲では音の数が豊富なものが多いのですから。
下手をすると全く完成度の低い楽曲にもしかねない「少ない音」という中で、上述したような計算し尽くされたかのような数学的対称を得たことに、何か人間の快感をもたらすものがあるのかもしれません。
時間の関係もありますので、今回はここまでとさせていただきます。
また、時間を上手に使って解析を進めてみます。
今日の記事を書いたきっかけは、ブログ「NewOrder」(←クリック)のGOMA28さんより解析のリクエストをいただいたことにあります。
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを語っておられます。素晴らしい記事が頻繁に更新されています。
今年10/17、20に「初恋」(←クリック)、「初恋-Ⅱ」(←クリック)という記事を書かれました。
GOMA28さんは、宇多田ヒカルの「初恋」を必ず一日に一度は聴くとのことです。ご家族もよく聴いているとのことです。
この曲を初めて聴いた時に、「初めてラベルの「ボレロ」を聴いたときのような充足感を覚えた」と綴っておられます。また、「天才が閃きと才能で作ったというのではない、彼女の畳み込まれた経験からはじめて晶結した曲だと思った。本当に詩に旋律にサウンド~アンサンブルに稠密な構築美を感じる。」とも綴っておられます。
僕はこの記事を拝見して、「これは何かあるに違いない」と思いました。
そして、早速youtubeで「初恋」を聴いたのでした。
僕は宇多田ヒカルは普通の人ぐらいには聴いたことはあり、その魅了される音楽には感動したことはあります。自分のブログの音楽解析の記事で、宇多田さんのことに言及したこともあります。
でも、「初恋」は未だ真剣に聴いたことはなかったのでした。
そして、GOMA28さんに次のコメントを差し上げました。
「宇多田ヒカルの「初恋」を毎日聴かれているのは印象深いです。私も聴いてみました。昔も耳には入っていたとは思いますが、しっかり聴くのは初めてです。確かにいい曲ですね。曲もいいですけど、メッセージも素晴らしいですね。さて、僭越にもこの曲へのまず印象を書かせていただきます。まず、歌のメロディーが細かい周期で上下を繰り返すのが特徴的ですね。ギザギザと上下しながらうねっていく。そのうねり方が、何となくきれいな対称形である気がします。まだあくまでも感覚に過ぎませんが。対称形とは言いながらも、全くの対称なのではなく、ややずれながらうねっている。富士山のような1つの峰の対称ではなく、八ヶ岳連峰と言いますか。音の分布をちゃんと取ってみたらおもしろいかもしれません。全体としてどっしりとした山並みなのか、緊張のある山容なのか、とか。そういった分布が聴く人に曲の印象を与えるのかもしれません。あと、宇多田さんの声と歌い方が特徴ですね。1つの音を出すのに幅広い声の出し方をするようですね。楽器で言うとバイオリンかギターのチョーキングのような感じを受けます。取りあえず、まずは感覚的なものを書かせていただきました。また、時間ができましたら、じっくり解析してみます。」
この話が進み、GOMA28さんより解析のリクエストをいただきました。
僕は、ある方から何かを頼まれるというのは、何かのご縁と感じて大事にしています。
自分でも得られる物が大きい場合がありますし、自分の枠組みも広がりますし。
よって、「初恋」の解析に取り掛かり、少しずつ進めてきました。
今日、解析はある区切りに達しましたので、Part 1として途中経過を紹介させていただきます。
本論に入る前に、とても長い前置きを書かせていただくことをお許しください。
僕は、9年前にこのブログを始めた時に、まずは「ビートルズがなぜ素晴らしいのかを新しい切り口で解析してみること」に絞っていこうと決めました。
そしてその目標はある程度達成したと思います。
そしてそのうちに、あらゆるジャンルで記事を無性に書きたくなり、怒涛のように書きまくり始めました。
片道30分の車通勤の行きに1記事、帰りに1記事が頭に浮かびました。
毎日記事を更新しても、新しい記事の構想がたまる一方で、一時は数十もの記事の構想がプールされていたこともあります。まさに”湧きかえる泉”でした。
それはそれでストレスが溜まりました。
あらゆるジャンルの記事を書くうちに、自分の特色は、理系の考え方の枠組みをベースに新しいことを考えることだ、と自信を持つに至りました。
こんな状態が2015年くらいまで続きました。
最近は、ようやく記事を書くよりも記事を構想する方が大変になってきました。ついに泉も枯れてくるのだな、と少し寂しい思いもしましたが。
ですので、考え方を変え、最近では新しい記事を生み出すよりも、これまでの記事をまとめ体系付けることに、より重点を置いています。
年齢的にもそろそろ若い人に伝える方に重きを置くようにシフトしています。
そのような機会も意識的にセットアップしていますので、ご興味ある方は気軽にご連絡ください。
そんなわけで、ブログを標榜している「ビートルズの新しい解析」のほうはすっかりご無沙汰してしまっていました。(ただし、ちょいネタ程度でしたら、自分の録音などを通じて随時紹介はしてきました。)
では、かつて真剣にやっていた「ビートルズの新しい解析」の一つとしての音の解析を少しご紹介しましょう。
以前からよく言われるのは「ビートルズの音楽は1/fゆらぎである」というものです。
1/fゆらぎとは、専門的に言うと、周波数fの対数と起きる現象のパワースペクトルの対数が反比例することです。
ま、専門的なことはともかく、1/fゆらぎという状態は人間にとっては心地よい状態だと言われています。
扇風機や洗濯機の動き方は、最近は1/fゆらぎに設計されていると言われています。
自然の風が心地よいのは1/fゆらぎに近い状態だからとも言われます。
高速道路での車の分布は、等間隔ではなく、1/fゆらぎになろうとする、という研究もあります。
そして、心地よい音楽の音の分布は1/fゆらぎか、それに近い状態である、という意見が多いです。
1/fゆらぎの科学的意味を正しく理解するのは難しいです。
化学をやってきた僕は、赤外線吸収スペクトルとか、NMRスペクトルといったものと同種の分布であろうと理解します。
僕はいきなり1/fゆらぎそのものを解析するのではなく、まずは”1/fゆらぎもどき”とも言える手法で解析してみることにしたのです。
すなわち、心地よい音楽の音の分布とは、低音部ほど音の頻度が大きく、高音部に行くに従い小さくなっていく。しかもその減少の仕方がきれいになっているほど心地よい、と。
これは仮説です。
わかりやすくイメージします。
山の形を思い浮かべてください。
山の下の方が低音、上の方が高音とします。
楽曲全体で使われる音を考えてください。ボーカル(歌)だけでなく、全ての楽器、すなわち耳に入る音全て、です。
心地よい楽曲の分布とは、富士山の形を思い浮かべてください。
どっしりした綺麗な逆三角形で対称形です。
楽曲で使われている音の分布は低音が最も厚く、高音に行くほど頻度が減少します。
ただし、「低音優先」とは思わないでください。
使われている音の音域は広く、音の数も豊富で、綺麗な分布。
「大きくて綺麗な逆三角形」なのです。
ある比喩をしましょう。
小学校の体育祭における組体操(すみません、正式な呼び名は何でしょうか? 最近多くの学校で禁止になった”アレ”です)です。
生徒一人ひとりを楽曲における音とします。
あのピラミッド型の逆三角形こそが最も美しい。そんな音の分布が、聴く者に心地よい感覚を与える、と僕は考えています。
あれの階層が多段であるほど、楽曲は心地よいと考えます。
あれがもし、一番下の階が、少ない人数で支えていたり、途中の階の人数が少なかったり、たったの3階建てだったりしたら、その楽曲の心地よさはイマイチでしょう。
僕は、ビートルズ、カーペンターズ、ユーミンなどの楽曲において、全ての使われている音の周波数と、その音が現れる頻度とのグラフをいくつか描いていました。
すると、僕の仮説はあながち間違ってはいないという自信を得たのです。
ただし、実験数はまだまだ十分ではありません。
それと、各音の音量をどう扱うかの問題があり、それもとても重要なのですが、ここでそれを話すと混乱しますので、省略します
そんな中、最も典型的な解析例がビートルスのDon't Let Me Down(←クリック)だったのです。
この曲は特に、ベースの音選びが、根音をしっかり強調すると共に、多種の音を多彩に使い、その分布が抜群であったために、とても聴くに心地よい楽曲となったと考えています。
ユーミンの曲も、どれも素晴らしいですが、さらに松任谷正隆さんのベースの音選びが素晴らしいことが、低音部の分布のよさに加担していると考えています。
ただし、低音さえ強調すればよいのとは違います。
例えば、ユーミンの曲の「ルージュの伝言」はベースの音が豊富ではありません。
ビートルズのThe Long and Winding Roadも同様です。
これらのベースのパートをもっと工夫すればさらに心地よく聴こえることでしょう。
すみません、僭越ですが。
そのような背景で、「初恋」の音の分布の解析をやってみました。
この曲はほとんどがボーカル(歌)から構成されています。
ベースのような低音部はほとんどありません。
ボーカルだけでもきれいな逆三角形になるかどうか、のような観点からまず音の解析を開始しました。
耳コピしてもよかったのですが、時間の関係で、ネットで楽譜を購入しました。
そして...。
その楽譜は驚くべきものでした。
楽譜を公表したいところですが、著作権法上、それはできません。
GOMA28さんへ書いたコメントでの感覚とほぼ同じでした。つまり、「ギザギザと上下しながらうねっていく。そのうねり方が、何となくきれいな対称形である。対称形とは言いながらも、全くの対称なのではなく、ややずれながらうねっている。富士山のような1つの峰の対称ではなく、八ヶ岳連峰のような感じ」。それは概ね当たっていました。
そして、解析してわかったこと。
1/fゆらぎのような感じとは大分違うということです。
驚きは、ソとラとシの3つの音でほとんど構成されていることです。
そしてその3つの音が”数学的”にきれいに対称になっているのです。
ボーカルのうち、イントロと主題1だけですけど、音を一つ一つ拾って、周波数と出現頻度の関係をプロットしました。下図です。

大きな3つの山がありますが、左からソ、ラ、シです。一番右の小さな山はレです。
特にイントロでは、ほぼ全くソ、ラ、シしか使っていません。しかもシが圧倒的に多いです。
主題では、イントロのソ、ラ、シより低い音、高い音を少し加えて、全体的にならすと、ソ、ラ、シをほぼ均等に出るように調整しているが如くです。
イントロと主題1を足したTotalという灰色の線は、音の数が少なく、そしてとてもきれいな対称を示しています。
上で、音の分布を富士山とか八ヶ岳連峰とか言ったのは、このグラフのことをそのまま言っているのではありません。
グラフのY軸(音の頻度)を横方向に持ってきて、X軸(周波数)を縦方向に持ってきての”山”の形です。
よって、「初恋」の山の形は中腹が出っ張った形になり、山としては不安定です。
しかも音の数が少ないので、なだらかな稜線ではなくヒイラギの葉のようなギザギザです。ただし、その対称形はとてもきれいです。
よって、「初恋」の音の分布は、僕がこれまでよいと考えて来た”1/f”チックな分布とはおよそ異なるものでした。
音の数が少ない歌というのはよくアマチュアがやりがちなことですけど、宇多田さんの場合はそんなことは全くないことは言うまでもありません。
事実、他の曲では音の数が豊富なものが多いのですから。
下手をすると全く完成度の低い楽曲にもしかねない「少ない音」という中で、上述したような計算し尽くされたかのような数学的対称を得たことに、何か人間の快感をもたらすものがあるのかもしれません。
時間の関係もありますので、今回はここまでとさせていただきます。
また、時間を上手に使って解析を進めてみます。
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