FC2ブログ

Coffee Break Beatles No.89 「All I Want is You」

英語は時制、冠詞、人称、単複などにうるさい言語だ。
それに対し日本語はいい加減だ。
どっちがいいのかはわからない。
言えることは、日本人は何事も人と阿吽の呼吸から入り、次第に具体像に発展させて行くのに対し、欧米人は最初から具体像を意識して客観的に契約を結んでから物事を進める文化がある。
ロックの歌詞の訳とか、捉え方において和英の言語の違いをクローズアップした評論はまだ見たことがない。

ビートルズのアルバム"Let It Be"に収められている"Dig a Pony"という名曲がある。
アップルビルの屋上でジョンが長髪を寒風になびかせながら、若干しかめ顔で歌うフレーズ"All I want is you."が渋い。

直訳すると、「私が欲するところの全ては君だ。」。
中学か高校の英語の文法で習った記憶がある。allという言葉を「いろんなものの集合体」と捉えれば複数扱いだが、「『全体』という一つの概念」で捉えれば単数扱いである、と。
中高生の頭ではなかなか感覚が掴めなかった。日本語では「『全部』は全部だ」。
waterのような物質名詞は数えられない(不加算名詞)ので単数扱いにするのよりは複雑な話である。

そもそもジョンの言う"All I want"とは何だろう?
人間、普通は欲しいものは一杯あるはずだ。金もおいしい物も、名声も、そして愛する人も。
ところが、それが"you"である、と。
欲しいものは君(多分ヨーコ)だけである。
ただし、ここで言う"all"は全体集合を概念的に指していると思われるので、単に「君」という単純なものではないかもしれない。
つまり、「優しい君」「仕事のできる君」「きれいな君」...そういのが全部合わさった複数の君の全体をまとめて"all = you"と言っているのかもしれない。

同じ使用法として、"All You Need is Love"がある。
この場合はもっと単純な意味で、単に「君が必要なのは愛だけ」という意味かもしれない。

さらに、"All My Loving"も興味深い。
「私の愛する様の全てを君に捧げる」という意味と思われる。

このように考えると、"all"という概念そのものが日本語にはないと結論付けられると思う。
少なくとも、日本語で言うところの「全部」のような単純な意味ではなく、その実体の全体を現す概念のようなものと思う。
だから単数の"is"を伴うことが多くなるのだろう。

英語は日本語に比べると理論的で冷徹のようにも考えられるが、このような言葉そのものの持つ背景を考えると、意外に深遠なものが見えてくる。
こうして考えると、ビートルズの歌詞は次のように訳してもいいのではないだろうか。(多少誇張した表現だが。)

"All I Want is You."
「僕が欲しいものはいくつかあるのだけど、結局君さえいてくれればその全てが満たされるのだ。」

"All you need is love."
「君にとって必要なものは、結局『愛』なんだと思う。」
(注; 「愛こそは全て」という訳も悪くはないと思う。ただし一般化され過ぎていて、やや薄っぺらな印象がある。)

"All my loving. I will send to you."
「僕は君を愛している。君をどうやって愛するのか..僕の中にある全てを今、君に捧げるよ。」

よく「丸ごと愛して」などと言うが、英語の"all"は「丸ごと」のような概念も含まれているかもしれない。

いかがでしたでしょうか?
スポンサーサイト



テーマ : ビートルズ関連
ジャンル : 音楽

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

ST Rocker

Author:ST Rocker
ビートルズ解析ブログへようこそ!
つくば-千葉-さいたま の三角形を行き来していますす。
モットー:理系なのに熱く音楽、政治・経済を語る。
酒と冒険と音楽をこの上なく愛し波乱万丈の人生を送るB型です。
コメントは本筋に沿ったものをお願いします。

最新記事
最新コメント
カテゴリ
FC2カウンター
Number of visitors
リンク
RSSリンクの表示
検索フォーム
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード