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日本語と英語の違い

言語はそれ自体の性格や文化がある。そして得意・不得意もある。

日本語は叙情的な表現が豊富であり優れている。
書き言葉と話し言葉が異なり、固い言い回しと柔らかい言い回しも使い分けられ、喜怒哀楽も微妙に表現できる。
男性と女性、大人と子供の話し方の違いもあり、恋の囁にもその独特の話法がある。
だから、その文を見る(聞く)だけで、どんなモードでのことなのかがわかる。
一方、英語はこうした区別が苦手である。その文を見た(聞いた)だけでは状況がわからない場合が多く、前後関係からの推定が必要になることが多い。

逆に英語は主語・述語・目的語の関係、単数・複数、時制の一致、冠詞、抽象名詞か具体的名詞の違い、などが厳格であるが、日本語はそれらが曖昧である。
よって、科学論文を書いたり、状況証拠を記述する時などは英語の方が的確である。

日本語は繊細な部分まで表現しようとするが、英語は合理的にできている。
今の中学英語がどうなっているか知らないが、我々が中学の頃に習った英語は、今になって思うと少し変に思うことがある。
例えば、動詞の原形で始まる文は命令文である、と習った。
しかし、後に実社会で触れた英語ではこれは必ずしも正しくない。
正解は「原形は命令の場合もある」である。そして、命令ではない場合の方が多い。
考え方としては、主語が省略しても意味が通じる時に動詞の原形が文頭に来る、というわけである。
それが命令を意味することが前後関係から明確なら命令文であり、それが敬意を意味するなら敬意文であり、単に二人称(あなた)の主語を略していて動作を意味する場合もある。

例えば、人に椅子に座ることを勧める場合には"Sit down"と言う。いちいちpleaseをつけなくても、その人に座ってもらう行為そのものが敬うことを意味するので、原形でよいのである。

あるいは、人に道順を教える場合は、日本語では「**を曲がってください。そして次の角で**へ曲がってください」などと、いちいち「ください」をつける。日本人はそれをそのまま英訳して"please**, and please**"といちいちpleaseをつけるから、おかしな英語になってしまう。
自然な英語では、単に道順だから、淡々と動詞を言うだけでいいのであり、道を教えていること自体が相手を敬っているのである。

もう一つの日本語と英語の大きな違いは、日本語には「厳格用語」と「平易用語」の区別があるが、英語ではあまりない。
例えば、「日米和平会談」などと言う場合、英語では"Japan-US Peace Talk"である。
日本語で「和平」は厳格用語であり、ふつうの会話では「平和」という平易用語を使う。
「会談」とtalkの関係も然りである。
英語の用語は子供の会話でも政府の用語でも基本は同じであり、前後関係でのその「重さ」が変るのである。
なお、英語にもいわゆる"big word"というのがある。例えば、degnity、significantのような一般会話ではあまり使わないような思い言葉である。しかしこれらの意味するところは、上述の日本語のもつ厳格用語とは違う。その話は割愛させていただく。

以上のような日本語と英語の違いが興味深く現れていたTV番組が昨日あった。
NHKアーカイブズ「ジョン・レノン没後30年」である。
この番組は素晴らしかった。
ジョンとヨーコの名曲Imagineが広く世の中に行き渡った背景と状況を余すところなく伝えていた。

番組中でヨーコさんが言っていたのは「あの曲はこんなにbigになるとは思っていなかった」と。
多分それは事実だろう。ジョンたちは宗教家や思想家のような大上段に構えて作った曲ではないだろう。
ジョンの才能や苦しみを分かち合うヨーコとの愛を、あのような言葉で普遍化した一種のメッセージなのだと思う。
しかし、あそこまでbigになったのは、アーティストとしてのジョンとヨーコの才能だと思う。

番組のもう一つの大きな功績は、加藤登紀子さんがImagineの名訳を紹介したことである。
上述した英語のもつ本質を素晴らしく解析している。
この曲の詞は"Imagine"という原形で始まるゆえ、多くの日本語訳では、「想像しなさい、***ということを」とか「想像してごらん、***と」などとなっている。
しかし加藤さんは言う。この曲で言う"imagine"はそんなに強い意味はない。「想像」という言葉を敢えて使うほどでもない、と。
そして、この曲全般に使われている名詞はそんなにbigな意味ではない、と。

次の訳が加藤さんが番組で紹介したものである。味わっていただきたい。

「天国なんかどこにもないんだ。 そう思うことは簡単なこと。
地面の下に地獄なんかなくて 頭の上には空があるだけ。
世界中の人々が きょうのために生きている。
国なんてどこにもないんだ。 そう思ってみることは難しいことじゃない。
なにかのために殺したり 殺されたりすることもなく 宗教もないんだ。
世界中の人々が 平和の中に生きている。
そんなことは夢の中の出来事だと あなたは言うかもしれない。
でもそう思うのは わたしひとりじゃない。
いつかあなたも そう思うようになり 世界は一つになるんだ。」

どうだろうか。私は、加藤さんの訳は本来のジョンとヨーコのメッセージにかなり近いと思う。
命令形"imagine"の動詞には深い意味はなく、名詞中心の英語表現も、日本語に直すには叙述を中心に書いた方が分り易い。

それにしても加藤登紀子さんにはすっかり惚れこんでしまった。
これまでは、獄中結婚の印象ばかりがあったのだが、昨日のTVを観て、本当に頭がよく素敵な人だと思った。
なんか、ヨーコさん以上にジョンをわかっている部分もあるような気がする。

いや、もちろんヨーコさんはジョンの最高の妻であり、また一人の人間として超一流である。
でも言葉や表現がアーティストなので、解釈が必要である。
それに対し登紀子さんは、解析的な言葉でジョンを語るのである。
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テーマ : ビートルズ関連
ジャンル : 音楽

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